地元の食材通販なのに、地元に貢献できないジレンマ

2011年に千葉から移住して立ち上げた、九州野菜食材通販かごしまんま。
当初は「地元鹿屋市の野菜食材を中心に、添加物を使用しない商品ラインナップにしよう!」と決めて、地元にたくさん貢献しようと商品を探しました。
(※鹿屋市は「かのやし」と読みます)

ところがすぐにそれは困難な道のりであることに気がつきました。

その理由は、鹿児島のソウルフードである甘い醤油。

鹿児島では伝統的に甘味料が入った甘い醤油を日常的に使用しています。
煮物、焼き物、豆腐や刺身、食卓にある醤油、ありとあらゆるものに甘醤油が使われています。
なので地元で販売されている加工品の大半にこの甘醤油が入っています。
しかしこの甘醤油の甘味料が、ほぼ全てサッカリンなどの人工甘味料。

甘醤油が鹿児島のソウルフードなのは、南国の気候を考えると理解できます。
しかしどうして砂糖ではなく、サッカリンを使用するのでしょうか。

醤油製造業の知人に聞いたところ、砂糖はサトウキビという植物から精製されるので、圃場や作付け年度や時期など色々な要因で糖度やミネラルが変化します。それが醤油作りの場では「安定していない」ということになり、砂糖が敬遠されてしまうのがひとつ。人工甘味料なら常に一定なので甘醤油づくりが安定します。
もうひとつの原因は、サッカリンの甘みが砂糖の1万倍であるということ。
つまりサッカリン1滴で砂糖10kg分ということになり、それだけで原材料費が大幅に違ってくるのです。

移住者である私が鹿児島の伝統的なソウルフードに対して「人工甘味料ではなく普通の砂糖が入っている甘醤油に変えていきませんか」とは言えません。
甘醤油は、鹿児島そのものの味で、鹿児島に生まれ育ってきた人々の故郷の味なのです。

かごしまんまに加工食材を紹介してくださる方や持ち込んで来られる方も時折いらっしゃいます。
しかし試食すると甘醤油特有の人工甘味料の甘さが舌にチリッと残ります。
そうすると申し訳ない思いでいっぱいになりながらお断りしなければなりません。
そういうことが続くうち、かごしまんまの加工食材のほとんどが地元ではなく九州各地のものとなっていきました。
本当はもっと地元に貢献したいのに、といつも思いながら。


『杉樽仕込み本醸造醤油』の杉樽

これは、出水市の醸造所の杉樽です。いわゆる『杉樽仕込み醤油』の杉樽です。確か高さが5mありました。
鹿児島県内で唯一、甘くない醤油を作っていたこのメーカーさんから本醸造醤油を仕入れていましたが、数年前に高齢化と人材不足のためやむなく醤油づくりをやめられました。
最後のロットでは、ラベルが不足して商品として出せないものも含めてかごしまんまでたくさん買取りし、製造終了を惜しみました。

現在かごしまんまでは、大分の醤油メーカーさんから甘くない醤油を仕入れて販売しています。

そういう10年を経てきたので、どうしても鹿屋に貢献していきたいという想いを込めて、名もなかったこの地小豆を『かのや姫小豆』と名付けました。

2023年 12月 17日 Blog | クラウドファンディング活動報告